2011/07/06

プラスの言葉

夕刻、スーパーの肉売り場の前を通りかかると、売り場担当の若いおにいちゃんが、割引シールを貼りながら、威勢のいい口上をまくし立てていた。
あれは声を張れば張るほどテンションが上がり、自分の口上に酔い痴れて気分が良いものだ。声を耳にする客の側も、売り手の声の威勢に生気がみなぎってくる。
やはり、声って「気」なんだな。私がひとりカラオケ()をやめられないのも、大きな声を出すことで、自分の中の気の向上が感じられるからだ。

それより何より、私の心をグッと掴んで放さなかったのは、その口上の文句だ。

「さぁさぁ、お肉ごろごろ!」

お肉ごろごろ!?肉売り場で、肉のボリュームを表すのに、これほど独創性に富んだ文句があったものか、と。
その文句は、誰か口上の上手い先輩から得たのか、それとも彼自身が発案したのか。
お肉ごろごろ。しばし、新鮮な肉の言霊に打ち震えて、その場に佇んでしまった。


私はよく会話の中で、「マイナスの発言をしてはならない」「ネガティブな言葉を使わない」などと聞いてきたが、これがどうにも疑問だった。
まず何より、「~ならない、~ない」の否定形の語尾自体から、マイナスでありネガティブなのに、何を言っているのかと。そして「ウソでもプラスの言葉、ポジティブな言葉」を、無理からに捏造して幸せごっこをしようというのは、どう考えても不幸だ。カラ元気は長続きするものではない。その言葉がウソだというところに、何らプラスもポジティブも見出せない。こういったことこそ明らかに、日本の言霊思想の弊害()なのだろう。

そもそも、ハリボテよりも、本物の中身がちゃんとあることに、惹きつけられはしまいか。ならば、自分の本当の気持ちに正直であることこそが、言葉にとって何よりではないか。
しかしもちろん、言い方もある。物言いは経験の中で磨かれるものでもある。
では、プラスの言葉、ポジティブな言葉とは一体何か。

といったことを常々感じることが多かったものだから、今日耳にした肉売り場の「お肉ごろごろ」に、プラスでポシティブな言葉の真髄を直感した。
耳に心地よさ気な煽ての言葉より、何と言うか、魂に響く言葉に出会える瞬間は、この上なく幸せになれる瞬間でもあると私は思う。