2012/01/16

『強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」』


そんなわけで。(

著者の略歴を見て、私と同い年の女性なので、驚いた。
若い身空で体当たりで旧ソ連諸国に出向いて、略奪婚の被害に遭いそうになったり、テロリストの嫌疑をかけられたりと、研究者というのは命懸けである。

テロの嫌疑をかけられたのは、ロシアの空港で高性能の放射線探知機にひっかかってしまったからだとか。失病の疑いから病院でアイソトープ(核医学)検査を受けた、二週間後のことだったそうな。この本の初版は2008年なのだが、今の時期的にタイムリーな「2mSv(ミリシーベルト)」の言葉が出てきた。

最近のロシアの空港も、日本人が通る度にブザーが鳴っているのだろうかと、検索していて、3.11からまだ日の浅い頃のニュースだと思うが、 日本で正式に登録されたロシア人は2000人だが、日本からロシアへの帰国を希望しているロシア人は6000人おり、さらに増える見通し…( という、2000人のはずのロシア人が、なぜ6000人も帰国したがるのかという、不思議なニュースに寄り道してしまった。

この本を読むと、カスピ海と黒海のあたりの、何やらややこしい国々の存在について知ることができる。
ごちゃごちゃし過ぎて、さすがに自称・共産趣味者の私も、南オセチアとアブハジアまでは何とか聞き及んでいるものの、「沿ドニエストル」という未承認国家がモルドバ国内にあるらしいと、ここで初めて知った。国名に「沿」ってなんやねん、と突っ込みたくなるのが人情であるが、一応、未承認国家である。
その、ややこしいところを、この本では解きほぐしてくれている。そうして理解できるのは、バカンスで出向くには、ちょっとややこしそうだな、と。

 「ソ連とロシアは異なるもの」であるし、「ロシアと旧ソ連構成国も同一のものではない」。が、しばしばそれらは混同されている場合が多いように思われる。
 旧共産圏の多くの国が欧米に積極的に接近し、また逆に欧米のほうでも旧共産圏を取り込む動きが顕著である一方で、ロシアはそれを傍観し、黙認しているわけではない。
 ロシアはさまざまな外交カードを所持しており、旧ソ連諸国が反ロシア的傾向を強めると、懲罰的にそのカードを切ってきた。そのため、旧ソ連諸国の多くは、懲罰を恐れて、外交的に拘束されてきたといえる。…
 ロシアがこのような外交カードを握り続けている以上、旧ソ連諸国はつねに親欧米路線と親ロ路線のジレンマで揺れ続けるだろう。生き抜くためには、両者の間で微妙なバランス外交を進めていくしか道はないのだ。

と。しかし、あのあたりの国々は割りに親日的だと、それは私もハッサン・バイエフ医師にお伺いしたことがある。(

 …ソ連解体後の教育はどうなったのだろうか。
 現在も義務教育は無料である。しかし、「教科書や教材費が高い」「学校に着て行かれるような服が買えない」「子どもを労働力として働かせたい」などの理由で、義務教育すら受けていない学徒が非常に増えている。そのような子どもたちは、昼間から、駐車場に置いてある車や、渋滞につかまっている車を勝手に拭いて対価を要求したり、親に強いられて引ったくりや物乞いをしたりして家計を支える。ストリート・チルドレンになるケースも多い。
 そして、教育のレベルは大きく低下してしまった。これはひとえに教師の給料が低いからである。
 …賄賂を要求しなければならない人びとの事情もある。そう、彼らの給料はきわめて少ないのである。賄賂を求めなければ家族を養っていけないのである。十分な収入があれば、賄賂を要求する者はほとんどいなくなるはずだ。(企業レベルの巨額の賄賂の受諾は別として)日常的に小さな賄賂を求める者は、ある意味、社会的弱者であり、被害者ともいえるだろう。

こういうのを読むと、「日本ってほんとにすばらしい!」ということになるのかもしれない。しかし。

日本のことにたちかえって、私個人思うに、現在の公務員の給与は民間企業に準じていない風にみえる。公務員の給与を下げるというより、陳腐化した公務員の制度と、彼奴らの腐った組合をてこ入れしないならば、税金は納め損の感。
ダテに30回転職したわけではない。官民どちらも垣間見てきた、正直な感想である。しかし、人間の性根がなかなか入れ替わるものではないことも、よくわかっている。
人間が性根を入れ替えるには、比較的心の若い時代に、余程の窮地に立たされたとか、かけがえのないものを思い切り失うなどといった、天地がひっくり返るようなきっかけが要るものだ。現制度のあの待遇で、腐った性根を入れ替える公無員が、滅多にいないことぐらいは想像に難くない。
「親を安心させるために」と糞壷を目指して、世間知らずに成り果てる、「やったつもり」の仕事をする日本の公無員。

あれらを社会的弱者に追いやって、いじ汚く賄賂をせびる姿を眺めるのも一興、と正直思わないではない。

 …いくつかの書物を紹介したが、それらはすべて真実とは限らないということだ。同じことでも、立場や意見が違うとまったく別のものに見えてくる。時期や背景によっても違ってくる。…(中略)…本を一冊読んで、それを鵜呑みにするのは危険である。あくまでも参考にして、さまざまな立場、多面的な方向性、時間軸をしっかり見きわめて個人で判断することが必要である。